プロジェクトについて
イギリスでスタジアム・オブ・ライトほど存在感を放つスタジアムはそう多くありません。サンダーランドA.F.C.のホームとして知られ、座席数は国内トップ10に入る規模を誇ります。さらに、Netflixのドキュメンタリー“Sunderland ’Til I Die”によって世界的な知名度も獲得しており、いまや単なるサッカースタジアムにとどまらず、イングランド北東部を象徴する文化的ランドマークとして、試合はもちろん大規模コンサートやイベントでも人々を惹きつけています。
スタジアム・オブ・ライトにおいて、音は単なる背景ではありません。それは選手やファンの心を動かし、会場全体の熱気と高揚感を生み出す“きっかけ”であり“原動力”です。しかし、長年このスタジアムで使われてきたPAシステムは老朽化が進み、その伝説的なエネルギーを支えるには不十分な状況でした。
「旧システムは27年も使用しており、音の聞こえやすさや構造の信頼性に限界が見え始めていました」と、サンダーランドA.F.C.の施設管理責任者であるクリス・ファーガソン氏は語ります。「一時的な対策ではなく、将来にわたって使い続けられるシステムへの刷新が必要でした。」
試合、コンサート、さらに非常放送までもが同じインフラに依存していたため、その重要性は非常に高いものでした。しかも新しいシステムに求められたのは、単なるカバレージの改善だけではありませんでした。ピッチからスタンドの隅々まで熱狂を届け、スタジアム全体を包み込むような没入感のある環境をつくり出すことが最大の課題だったのです。
Bose Professionalのソリューション
Bose Professionalがプロジェクトに参加するきっかけとなったのは、2022年11月。ビジネス開発マネージャーのJJ・バーネット氏がスタジアムの施設チームとコンタクトを取ったことが始まりでした。「スタジアム・オブ・ライトは象徴的な会場であり、最初の打ち合わせから、彼らが何を求めているか明確なビジョンを持っていることがはっきりとわかりました」とバーネット氏は語ります。「そして私たちには、それを実現できる完璧なソリューションがあると確信していたのです。」
インテグレーターのSolotechと協力しながら、Bose ProfessionalはサンダーランドA.F.C.と緊密に連携し、パフォーマンス・安全性・ファン体験の目標を満たすカスタムシステムを設計。複数回の現地訪問と協議を重ねることで、アプローチを洗練させ、信頼関係を築いていったのです。
「他メーカーの製品もいくつも検討しました。」とファーガソン氏は振り返ります。「でも結局のところ、最終的にはBose Professionalに戻ってきてしまうんです。」
「Bose Professionalのチームは、最初から本当に素晴らしかったです」と彼は続けます。「素晴らしいパートナーシップを築けました。彼らの提案するソリューションは、私たちが求めていた条件をすべて満たす理想のものでした。」
課題のひとつは、スタジアムの各スタンドがまったく異なる建築構造を持っていたことでした。広々としたオープンエリアもあれば、狭く入り組んだコーナーもあり、さらに屋根の耐荷重制限という制約もあります。「スタンドごとに少しずつ構造が異なるため、詳細な設計プロセスが必要でした」と、Solotechのインテグレーション・プロジェクトマネージャーであるベン・グリーン氏は語ります。「Bose ProfessionalのModelerソフトウェアのおかげで、適切なコンポーネントを組み合わせ、高いパフォーマンスと必要なカバレッジの両方を実現できました。」
システムの中心には、ArenaMatch ラインアレイスピーカーシステムが導入。 AM10、AM20、AM40 の各モジュールは、それぞれ異なる垂直角を設定できる点が評価され、採用されました。 AM10の狭い10度の指向角は扱いの難しいコーナー部分を攻略し、AM40の広い40度の指向角が広大なスタンド全体をしっかりとカバーします。 さらに、カスタマイズ可能な水平ウェーブガイドにより、すべての座席に正確なサウンドを届けつつ、空間を圧迫しない音響設計が実現しました。
「ArenaMatchの大きな強みの一つは、各スタンドの独特な形状に合わせてウェーブガイドを変更できることです」と、Bose Professionalのリージョナルセールスエンジニアであるアンドリュー・ホースバーグ氏は語ります。「そのおかげで、このようなスタジアムでは難しいとされる最後列やコーナー部分までしっかりと音を届けることができました。」
このシステムを駆動するアンプは、柔軟性と高出力に定評のあるPowerShareX アンプ です。各チャンネルで1台のスピーカーを駆動することで冗長性を確保し、スタジアムの生命安全インフラの一環として非常放送機能も備えています。「技術的に高度かつ複雑な構成ですが、明瞭さと音楽性の両方を兼ね備えた、まさに現代のスタジアムにふさわしいシステムです」とグリーン氏は語ります。
短いオフシーズンでの工期は、まさに完璧な実行力が求められるプロジェクトでした。「Bose Professionalは、必要なタイミングで必要な製品を確実に届けてくれたのでとても助かりました」とグリーン氏は振り返ります。 稼働中のスタジアムで大規模な設置を行うのは決して容易ではなく、シーズン日程やタイトなスケジュールの調整も大きな課題でした。しかし、ファーガソン氏はサンダーランドA.F.C.、Bose Professional、Solotechのシームレスな協力体制が、円滑な導入につながったと評価します。「価格は明確かつ透明で、パートナーシップは強固、そしてインテグレーターも本当に素晴らしかった」とファーガソン氏。「私たち3者は、最高のチームでした。」
Bose Professionalの技術サポートも際立っていました。「私たちはスタジアム建設の経験が豊富ですが、メーカーにしかわからないことというのは常にあります」とグリーン氏は語ります。「彼らのチームは現場で私たちの作業を丁寧にダブルチェックし、最高レベルのシステムを実現するための貴重なアドバイスをくれました。」
新シーズンが開幕しファンが戻ってくると、その効果はすぐに現れました。
「何より嬉しかったのは、ファンの反応です」とファーガソン氏は語ります。「初戦から多くの人が“スタジアムの雰囲気がまったく違う”とコメントしてくれました。ファンエンゲージメントチームもこのシステムを活用し、試合前から素晴らしい雰囲気をつくり上げてくれました。」
「熱狂的なエネルギーがスタジアム中に満ち溢れ、それがピッチ上にも表れていました」と彼は続けます。「スタジアム・オブ・ライトでのファン体験は、まったく新しい次元へと進化したのです。」
「サンダーランドのファンが新しいシステムを体感するたび、私たちがその変革に貢献できたを誇りに思います」とグリーン氏は語ります。「これこそまさにワールドクラスのオーディオシステムです。」
スタジアム・オブ・ライトは、今やその名にふさわしいアイコニックなPAシステムを備える唯一無二のスタジアムとなりました。それはBose Professionalの革新性と、サンダーランドA.F.C.がファンに注ぐ情熱の証です。サウンドが魂を鼓舞するこの会場で、Bose Professionalはスタンドの枠を超えて響き渡るソリューションを実現したのです。