重要なポイント
- スピーカー選びは、スペックを見て「これで決まり」というわけではない。システム全体の要件、空間の特性、設置条件、デザイン、予算。もちろん、使い慣れているかどうかも大事なポイントだ。いくつもの条件をひとつずつ見ながら、そのプロジェクトに合うモデルを探していく。
- スピーカーを検討するころには、すでに選択肢が絞られていることも多い。DSPのプラットフォームやアンプとの互換性、ネットワーク規格など、スピーカーを選ぶ前の条件によって、そもそも実現できるシステムが決まっているからだ。
- 部屋の形や、スピーカーの設置場所によっても、候補はどんどん絞られていく。だからこそ、カバレッジや明瞭度、実際にうまく機能するかどうかを確かめるには、事前のモデリングも欠かせない。
- インテグレーターが最後に選ぶのは、出力や価格だけではない。リスクを抑えられるか、スムーズに施工できるか。そして、音響と建築、その両方の要件を満たせるか。そこまで含めて、最終的なモデル選定へと進む。
5人のインテグレーターに「このプロジェクトなら、どんなスピーカーを選ぶ?」と聞いてみたら、きっと5つの答えが返ってくる。性能から考える人もいれば、見た目を重視する人もいる。ずっと使い続けてきた、という理由で選ぶ人だっている。大規模なマルチゾーンのプロジェクトになると、そもそもスピーカーが主役とは限らない。制御やDSP、配線、建築上の制約。そんな一見スピーカーとは関係なさそうなことが、実は選択を大きく左右している。
つまり、スピーカー選びに決まった正解や一本道のプロセスがあるわけではない。現場の要件や空間の制約、予算、スケジュール、これまで使ってきたブランドなど、さまざまな要素が絡み合っているのだ。
これまでインテグレーター、コンサルタント、エンジニアと交わしてきた数多くの対話と、数百件に及ぶプロジェクトの経験をもとに、現場の制約や実際の運用を踏まえた、9つのステップにまとめた。
ステップ1:システム全体から考える
多くのプロジェクト、特に企業や大学、複数の建物からなるキャンパスでは、インテグレーターや設計者は、スピーカーから検討を始めるわけではない。まずはDSPや制御プラットフォーム、ネットワーク要件、アンプとの互換性など、システム全体の構成を決めることから始まる。
インテグレーターがまず確認すること
- キャンパスで採用・標準化されているDSPプラットフォームは何か
- IT部門はどのような制御プロトコルをサポートしているか
- そのDSPと相性の良いアンプはどれか
- 他の部屋や建物には、既にどのような機器が設置されているのか
ステップ2:部屋を評価する
システム全体の構成が決まったら、次は空間を見る。
ここで確認すること
- 空間の広さ
- 反響するかどうか
- ターゲットにするSPL
- スピーカーは、実際にどこへ設置できるか
- 天井の高さ
- デザイン面での要件
- スピーチ用途か、音楽も再生するか、両方か
この段階で、最適なスピーカーのタイプを絞り込む
- コラムアレイには広すぎる→ポイントソース
- 天井が高くてパッシブコラムが設置できない →ステアラブル
- 広範囲をカバーする必要がある→分散配置
- 長い到達距離と正確な指向性制御が必要 → ラインアレイ
- 狭い+内観との調和が必要 → 露出型または天井埋込型
この段階だけで、スピーカーの選択肢は60~80%ほど絞り込まれる。
ステップ3:デザインでさらに絞り込む
しかし、たとえ音響面ではその空間に最適なスピーカーでも、この段階では建築家やオーナー、デザイナーの意向が選定を左右することが少なくない。
- 「目立たないようにしたい。」
- 「天井と合わせたい。」
- 「壁や天井に埋め込みたい。」
- 「照明と合わせたい。」
- 「伝統的な内観に合うデザインにしたい。」
つまり、技術面だけではなく、見た目やデザイン的な要件が選定を左右することも少なくないということである。
だからこそ、多くのインテグレーターは、より高出力のスピーカーがあってもDesignMaxを選ぶ。建築との調和が求められる空間では、デザインも大切な選定基準になるからだ。
ステップ4:実際の設置条件が最終的なスピーカー形状を決める
スピーカーの種類を絞り込んだら、次は設置条件で候補をさらに絞り込む。とはいえ、実際の現場ではさまざまな制約が出てくる。たとえば:
- 柱が邪魔だが移動できない
- 壁が強度不足でポイントソースを設置できない
- 天井に大きな開口が開けられない
- 既存の配管でケーブル配線をしなくてはならない
- 歴史的建造物で、穴あけや加工に制約がある
- 視界を遮る場所には設置できない
この段階になると、インテグレーターからは「では、この条件で設置できるものを見せてください」と言われることが多い。
ここで力を発揮するのが、Bose Professionalのデザインサポートチームである。モデリングによって、限られた設置位置から、どのソリューションが実際に機能するのかを確認し、複雑なプロジェクトでも、勘に頼らず確実な選択肢を提案できる。
ステップ5:SPL、ヘッドルーム、カバレッジ要件
ここまでの条件で候補を絞り込んだら、いよいよ具体的な音響性能を検討していく。インテグレーターが確認するのは、次のような項目だ。
- 最大音圧レベル
- 連続運用時のヘッドルーム
- 周波数特性
- 水平・垂直指向特性
- 到達距離
- カバレッジの均一性
- スピーカーからリスナーまでの距離
- 直接音と残響音の比率
ここで、候補はさらに絞り込まれます。
たとえば教会の場合、最初は5つの製品が候補に挙がっていても、最終的には、設置高、建築上の制約、カバレッジの要件によって、選択肢はステアラブル・コラムアレイに絞られることがある。
ステップ6:サブウーファーは、まったく別の選定プロセス
一方で、サブウーファーを選ぶときは、別のプロセスで進めることが多い。インテグレーターが重視するのは、次のような点である。
- 場所(屋内/屋外)
- サイズと設置面積
- 最大出力
- 設置方法や目立たせないための要件
- 音楽重視か、音声重視かというクライアントの要望
- 建物が低域の音圧に物理的に耐えられるかどうか
多くのインテグレーターは、サブウーファーのブランドにかかわらず、まず設置条件などの物理的な制約を見て、次に必要な周波数特性を考える。
だからこそ、MB210-WRのような製品が、実際の現場で重要な役割を果たす。
ステップ7:使い慣れた製品と過去の実績が、最後の決め手に
技術面や建築面での検討を重ねても、実際に使い慣れている製品かどうかは、やはり大きな判断材料になる。
システムインテグレーターが選ぶ傾向:
- 長年使い続けている製品
- 検査で問題にならないと分かっている製品
- 技術スタッフが迅速に施工できる製品
- 保守対応しやすい製品
- クライアントがすでに信頼されている製品
- 社内に在庫がある製品
- スムーズに調整できる製品
ステップ8:性能と予算のバランス
予算は、選定のあらゆる段階に影響する。インテグレーターは最初からコストを意識するが、見るのはスピーカー単体の価格ではなく、システム全体のコストだ。
ワークフロー全体を通してインテグレーターが考慮すること:
- アンプチャンネルがいくつ必要か
- DSPが予算にはまるかどうか
- 付属品と取り付け金具の費用
- 作業時間と設置の複雑さ
- より効率のよいスピーカーで、システム全体のコストを抑えられるかどうか
- より手頃な価格の製品を選ぶことで生じる音響面の妥協を、クライアントが受け入れられるかどうか
多くの場合、インテグレーターは次のように判断する:
- 「このポイントソース型スピーカーは安いが、台数が必要になる」
- 「このコラムアレイは高価だが、設置時間を大幅に短縮できる」
- 「このステアラブルアレイは初期費用は高いが、追加の処理をせずに音響的な課題を解決できる」
- 「このサブウーファーが最適だが、設置スペースを確保するための工事が必要で、クライアントの承認が得られない」
このように、スピーカーは単体で選ぶのではなく、性能、施工性、システム全体のコストのバランスを見ながら決めていく。
ステップ9:最後の判断基準―「本当にこれでうまくいく?」
長い選定プロセスの最後に残るのが、モデリングと検証だ。
ここでインテグレーターが確認すること:
- カバレッジの均一性
- SPL性能
- 本当に設置できるか
- 反射音の経路
- ステアリング角度
- 低音域のレスポンス
- 他ゾーンと音色の一貫性があるか
- STI/音声明瞭度
- システムヘッドルーム
Bose Professionalのデザインサポートチームが、プロジェクトの行方を左右することもある。インテグレーターは、モデリングレポートを使って、建築家やオーナー、コンサルタントに「なぜこの製品なのか」を説明する。選定の根拠を、数字と結果で示せるからだ。
選定プロセスは一直線ではなく、段階的
最適なスピーカー選びは、さまざまな制約や優先事項を段階的にクリアして進むプロセス
- システム全体
- 部屋の形状
- 見た目の条件
- 設置
- カバレージ
- サブウーファー
- 製品に対する親近感
- 予算
- モデリングの確認
こうしたプロセスを知ると、なぜ特定の製品が繰り返し選ばれるのかが見えてくる。そして、新しい製品を広めていくには、まず実際に触れて、使ってもらうことが大切だということも。
そして、もうひとつシンプルな事実がある。インテグレーターが選ぶのは、リスクを抑え、施工をスムーズにし、安定して使え、空間・デザイナー・クライアント、それぞれの要件に応えてくれるツールということである。
これらの条件が揃うことで、優れたシステムができあがるのだ。
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プランの確認やカバレッジのモデリング、環境に最適な機器の選定についてご相談があれば、Bose Professionalのデザインチームとエンジニアがサポートします。