導入事例:ホスピタリティ|シマノ自転車博物館

プロジェクトについて

株式会社シマノは自転車の構成部品や釣り用具の製造で世界的に知られる企業です。同社が創業し今も本社を置く大阪府堺市は、昔から鉄の加工や鋳造、成型の技術を持つ職人たちが多く暮らし、刀や火縄銃など様々な鉄鋼製品が作られてきました。

堺に宿るモノづくりのDNAを大切にする同社が設立に関わった公益財団法人シマノ・サイクル開発センターが、地域貢献と自転車文化振興のために「自転車博物館サイクルセンター」を1992年に開館。それを2022年にリニューアルオープンしたのが「シマノ自転車博物館」です。自転車が変えてきた歴史とそれを創り上げてきた発明家たちの情熱、そして乗る人に与える自由と可能性を、音と映像のシアターや世界中から集められた自転車コレクション、自転車の仕組みを体験できるコンテンツなど充実した内容で伝えています。

「200年に及ぶ自転車の歴史とその自転車を支える技術、そして暮らしの中に根差した文化としての自転車をきちんと伝えていくことを目指しています。そのために展示も伝え方も冗長になりすぎずにできるだけシンプルでノイズレスにコミュニケーションしたいと考えました。」そう語るのはこの博物館の立ち上げ移転に尽力したシマノ・サイクル開発センター参与の神保正彦氏です。

多くの展示物や説明パネルなどでたくさんの情報量を伝えることよりも、できるだけシンプルに誰でも理解できて、それぞれに自転車に対して考えを巡らせる、そんな空間創りのために展示設計・施工を担当した乃村工藝社らとの打ち合わせを重ねました。その実現において、映像コンテンツと音響は観客の興味関心を引きながら必要な情報を伝える大きな役割を果たしています。

島野ロビー

Bose Professionalのソリューション

シマノの自転車

乃村工藝社から受け取ったデザインコンセプトと音響へのリクエストを基に、シミュレーションソフトモデラーを使いながらBoseのエンジニアがシステム提案をしました。

まず、訪れた人が最初に視聴する1Fのヒストリーシアター。大型スクリーンの前に階段状に座席が配され、自転車誕生から現在に至るまでの歴史を知ることができます。できるだけスリムで意匠を邪魔しないスピーカーでありながら、明瞭で反響が起こりにくいスピーカーを探す中で採用されたのはステアラブルラインアレイMSA12Xです。座席面より高いスクリーンのセンター位置に音を定位させながら、電気的に下ぶり角度をつけることで客席をしっかりカバーしています。また、それにより後壁からの反射も抑えられクリアな拡声を実現しています。

島野劇場

続いて、来館者は2Fのパノラマシアターへと進み、自転車を開発した様々な発明家たちの夢や情熱を知ることができます。数々の歴史的自転車の展示とカーブした壁面に6面に渡って映し出される映像が人々の高揚感を煽ります。

この空間には、AMM108とEdgeMax EM180が5か所のメインスピーカーとして、DM8C-SUBがサブウーハーとして採用されています。特に天井埋込でありながら客席面へ向けて露出型と同等の広いカバレッジを提供するEdgeMaxスピーカーは、他社にないスピーカーとして非常に重宝されました。音の移動感や包囲感を再現するサラウンド音響を天井埋込型で実現することで、壁一面の映像投影が可能となり妥協することのないシステムが構築できています。

加えて、天井埋込型のサブウーハーも空間全体に低域の迫力を伝えるのに役立ったといいます。来館者は、6面の映像とそれに合わせた音のリアリティにより、発明家たちの自転車への情熱とそれがもたらした人々の「移動」に対する可能性を活き活きと感じることができます。

自転車の歴史とそれに携わった人々への理解が深まったあとは、このシアターを出てギャラリーゾーンに進みます。そこには、自転車の構成部品やギアとブレーキなどその構造を体験しながら学べるコンテンツが揃っており、最後は自転車を自分のための道具として身近に感じることができるようになっています。最後に、堺の歴史に関する映像の放映や各種講演会が開催される1F ミュージアムスクエアには、メインスピーカーAMU208と天井埋込スピーカーDM5Cが設置され、ハウリングのない均一でクリアな拡声を実現しています。全てのシステムは、ControlSpaceがその核となる信号処理を担当しています。

乃村工藝社テクニカルディレクターの津田裕氏はBoseスピーカーの印象を次のように語っています。「シンプルな色合いと外観が、建築家が好むようなスクエアやシンメトリーのデザインととてもマッチすると思います。音質面で言うと、まず人の声との相性がいいですね。作品を伝えるときにはスピーカーの音質とナレーターの声質のマッチングを考えるのですが、Boseのスピーカーはその許容範囲が広く男性の声でも女性の声でもはまりやすいという風に感じています。情報を伝達することが重要な施設でもとても使いやすいですね。」

シマノショールーム

「パノラマシアターを出てくる人たちが心の中で拍手しているのを感じることができました。観終わってもう一回自転車に乗っていくときのわくわくする気持ちをサポートできたんじゃないかと思います。

わたしたちは技術だけでなく、自転車がこれからどのように世の中の役に立てるのかも考えていきたいと思っています。Boseも歴史あるスピーカー・メーカーで、そのブランド・ヒストリーがある。きっと正統派の音を作りこむDNAがあって、それが包容力のある音につながっているのだと思います」と神保氏は語ります。

シマノ自転車博物館は、長い歴史の中で育まれた堺のモノづくりにかける想いと、それが結実した自転車という限りなく自由な乗り物の魅力を、今後も訪れる人たちに伝え続けていきます。リニューアルに当たって導入された新しいコンテンツはその想いを映像と音声で確実に届け、ますます訪れる人の好奇心とわくわくする気持ちを加速させ広げていくに違いありません。

「パノラマシアターを出てくる人たちが心の中で拍手しているのを感じることができました。観終わってもう一回自転車に乗っていくときのわくわくする気持ちをサポートできたんじゃないかと思います。Boseにはきっと正統派の音を作りこむDNAがあって、それが包容力のある音につながっているのだと思います」

- 神保正彦
参与
シマノサイクル開発センター

取締役大阪オフィス代表 小林仁氏 (現在KOO-Associates 代表取締役)

パートナー 株式会社 竹中工務店 施工

パートナー株式会社 乃村工藝社 展示設計・施工

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