導入事例 – ゴールドジム | スポーツ&フィットネス

プロジェクトについて

フィットネス競技の“原点”を象徴する場所を一つ挙げるとすれば――ゴールドジム・ベニスビーチをおいて他にありません。世界中で“ボディビルのメッカ”と称されるこのジムは、単なるトレーニング施設ではなく、競技文化そのものを体現する存在です。

創業から約60年。ゴールドジムは、オリンピアチャンピオンをはじめとするトップアスリートから、情熱を持つトレーニーまで、幅広い層を受け入れ続けてきました。その空間には、まさに歴史が息づいています。壁を彩る壁画や額装された写真、ミスター・オリンピア優勝者たちの栄光の記録。そして、アーノルド・シュワルツェネッガーが映画『ターミネーター』で着用したジャケットまでもが展示され、訪れる人々に唯一無二の臨場感を与えています。ここでのトレーニングは、ただのワークアウトではありません。伝説の軌跡に直に触れ、自らの歴史を刻む体験といっても過言ではないのです。

2020年、世界有数のフィットネス企業であるRSGグループがゴールドジムを買収。伝説のジムの“魂”を守りながら、時代に合わせて刷新するという大きな使命を担うことになりました。

中でも最大の課題のひとつは、老朽化した音響システムの入れ替えでした。既存の設備は古く、ジムの熱気に性能が追いついていなかったのです。しかし、改修作業は容易ではありませんでした。ゴールドジム・ベニスビーチは世界有数の会員数を誇り、約7,000人の会員が日々利用します。営業を止めての改修工事は不可能でした。さらに、壁面には歴史的な記念品が数多く展示されており、ブランドイメージとカルチャーを損なわないシームレスなソリューションが求められました。

RSGグループでミュージックプログラミング&AVインテグレーション部門ディレクターを務めるトム・ブリュー氏にとって、目的は単なるスピーカーの改修ではありませんでした。ゴールドジムでの“音の体験”そのものを再定義することだったのです。<br><br>「フィットネス空間において、サウンドは不可欠です」とブリュー氏は語ります。「気持ちを高めたい、モチベーションを上げたい。音楽がワークアウト牽引する。だからこそ、私たちは最高のテクノロジーを駆使したユニークなアプローチを採用したのです。」

こうした考えのもと、RSGのチームは新しいシステム選定に向けて3つの重要な目標を設定しました。

  • 没入感がありながら邪魔にならない音響環境 — ワークアウトを盛り上げつつ、空間を圧迫したり気を散らせることのない、クリアなサウンド。
  • シームレスな美的統合 — 目立つスピーカーや配線の露出を避け、ジムの歴史的な空間に自然に溶け込むデザイン。
  • 均一で一貫したカバレッジ — デッドスポットをなくし、屋内でも屋外でも同じモチベーションを保てるエネルギーを体感できること。

Bose Professionalのソリューション

ゴールドジム・ベニスビーチという重要なプロジェクトに向け、RSGグループが選んだのは信頼できるパートナー―AVインテグレーションで40年以上の実績を持つ、老舗のBose Professional販売代理店・マウンテンメディアでした。

同社の代表、パトリック・キャリガン氏は、これまでにも数多くのRSGグループのプロジェクトを手掛けてきましたが、ベニスビーチは特別だったといいます。彼はそれを「まさに最高の舞台(the prize)」と表現しました。

「ここは世界で最も象徴的なジムです」とキャリガン氏は語ります。「この場所の音響システムをデザインできるとなれば、迷う理由はまったくありませんでした。」

マウンテンメディアには明確なビジョンがありました。それは、Bose ProfessionalのEdgeMaxラウドスピーカーを基盤に、シームレスで没入感のある音響体験を実現することです。

EdgeMaxシリーズは、ゴールドジムのような活気とエネルギーに満ちた環境には理想的なソリューションでした。コンパクトな天井埋込型でありながら、露出型スピーカー並みの音量と明瞭さを実現するよう設計されており、美観と音質の両方のニーズを満たしていたのです。

キャリガン氏はこう説明します。 「EdgeMaxは本当に素晴らしい。特に、きちんとチューニングできる人なら、そのポテンシャルを存分に引き出せます。これまで天井埋込スピーカーは、“目立たず設置できる”という理由で選ばれることが多く、そもそも“音楽を良く聴かせる”ために選ばれることはありませんでした。EdgeMaxはその常識を変えたんです。」

EdgeMaxのもう一つの大きな利点は、天井埋込型にも関わらず指向性を持たせて狙ったエリアへ音を放射できることです。これにより、ジムのレイアウトや利用者の動線に合わせて音響体験を最適化することができました。

トム・ブリュー氏はこの重要性をこう強調します。「トレッドミルで走っているとき、音が前から聞こえると最高の体験を得られることに気づいたんです。背後から爆音で音楽が聞こえてくると、まるで誰かに追われているみたいで嫌でしょう?でも前から聞こえてくると、自分が導かれているような感覚になるんです。」

そこでチームは、各マシンや通路に均一かつ没入感のあるサウンドが行き渡るようシステムを設計。ジム全体で、音楽が自然に動きと調和する空間を実現しました。

しかし、そこには大きな課題がありました。EdgeMaxは天井埋込型スピーカーのため、ゴールドジム・ベニスビーチのような天井がむき出しのインダストリアルな空間では、簡単に取り付けられなかったのです。

「マウンテンメディアのチームは、難題が大好きなんです」とブリュー氏は振り返ります。「彼らは問題解決にとてもクリエイティブで、常識にとらわれないアイデアを出してくれる。今回はEdgeMaxをペンダント型スピーカーのように吊り下げられる、特注ボックスを設計してくれました。」

EdgeMaxスピーカーを吊り下げるアイデアによって、マウンテンメディアはこれまでにない環境へのスピーカー導入を成功させました。その成果は、期待を大きく上回るものでした。

キャリガン氏はさらにこう説明します。 「私たちはEdgeMax用に、軽量でコンパクト、かつ輸送しやすい専用ケースを設計しました。これでこのソリューションはベニスビーチだけでなく、世界中のゴールドジムやRSGグループの施設に提供できるようになったのです。」

ゴールドジム・ベニスビーチが有名なのは、屋内トレーニングエリアだけではありません。広大な屋外ワークアウトスペースも備えており、カリフォルニアの太陽の下、象徴的な“グリーンウォール”を背にウエイトを持ち上げる―そんな世界でも稀有な体験ができます。

屋外エリアには、Bose ProfessionalのAMUシリーズスピーカーを設置。フルレンジのサウンドを高い明瞭度と耐久性で再生できるよう設計されたモデルです。しかし、時間帯によって音量をコントロールしなくてはいけないという、屋外ならではの新たな課題がありました。

ジムは住宅街にあるため、早朝5時から大音量で音楽を流すわけにはいきません。さらに、長年通う会員の中には、鳥のさえずりやバーベルを置く音が聞こえるような静かな環境での早朝トレーニングを習慣にする人もいます。そこで、時間帯に応じて音量を徐々に上げていく工夫が必要だったのです。

MTVやヨーロッパ最大のラジオ局でのミュージックプログラミングのキャリアも持つブリュー氏は、この課題に慎重に取り組みました。Bose ProfessionalのControlSpace Designerソフトウェアとデジタルシグナルプロセッサー「ControlSpace EX-1280」を用い、最適な解決策を導き出したのです。

「多くのジムでは、音楽の制御はオン・オフだけでしょう」とブリュー氏は説明します。「しかしここでは、自動化システムを構築して、午前中から少しずつ音量を上げ、1日を通じて適切に調整できるようにしました。こうすることで、近隣住民に配慮しつつ、さまざまなメンバーのニーズにも応えられたのです。」

複数のゾーンがあり、屋内・屋外でまったく異なる音響環境を備えるこの施設では、システムをリモートで細かく調整・制御できることが不可欠でした。そこで活躍したのが、Bose ProfessionalのControlSpaceです。 「ControlSpaceは、シンプルさと機能性のバランスが非常に優れています」とブリュー氏は語ります。「今でも業界で最高のツールのひとつだと私は思っています。」

シームレスな統合と正確なコントロールを実現するため、システムのプロセッサーには、Danteネットワークに対応した「ControlSpace EX-1280C」が採用されています。システムは広範な配線によって構成され、エアコン完備のアンプルームには、8台のPowerMatch PM8500Nアンプが設置されています。

Dante接続により、余計な配線を最小限に抑えつつ、信頼性が高くスムーズな運用を実現しています。さらに柔軟性を確保するため、追加の入力も戦略的に配置され、一階にはマイク入力、屋外デッキにはDJ用、屋内にポータブルDJ用入力を設置。すべてをDante経由でシームレスに接続することで、効率的な信号分配とコントロールを可能にしました。

マウンテンメディアは、スピーカーの配置ごとに個別調整を行い、ジム全体で最適なオーディオ体験を実現しました。

同社のAVシステムプログラマー、ロバート・カッチャトーレ氏はそのアプローチをこう語ります。「ほぼすべてのスピーカーを独立したラインで接続しているので、システム全体を驚くほど細かくコントロールできるんです。ジム全体を歩き回りながら、通路やトレーニングエリアなど、場所ごとにバランスを微調整できるようにしました。」

クラウドベースの制御システムにより、リモートでのトラブルシューティングや調整が可能になり、ダウンタイムの削減にもつながっています。 ブリュー氏はこの機能の価値についてこう語ります。 「私はどこにいても、必要があればリモートでログインして調整できます。現地に行く必要はありません。すべてカスタムチューニングされているんです。」

スピーカーの最適な配置を確保するため、チームはBose Modelerソフトウェアを活用し、システムのシミュレーションを設計しました。

カッチャトーレ氏はこう説明します。「システムデザイナーは通常、壁や天井、床の構造を基準にスピーカーの配置を決めます。しかしゴールドジムでは、壁一面が展示品で覆われており、好きな場所に設置するわけにはいきませんでした。Modelerを使うことで、それらを損なわない最適な配置を見つけられたのです。」

Modelerを活用することで、チームは空間内での音の挙動を事前にシミュレーションし、低音の過剰なブーストなどの問題を回避しつつ、すべてのエリアで均一なカバレッジを確保することができました。これにより、現場でのシステム調整やチューニングにかかる貴重な時間を大幅に削減できたのです。

「トムにとって最も重要なのは、音楽的でダイナミックなサウンドであることです」とカッチャトーレ氏は語ります。「彼の最優先事項は、明瞭で高品質なサウンドと、大音量に頼らずとも得られるシームレスで均一なカバレッジです。Modelerを使えば、スピーカー同士の相互作用を可視化し、設置前に問題を解消できるのです。」

さらにModelerは、ジムの美観を損なうことなくリアルタイムで調整を行う上でも役立ちました。 「Bose Professionalのソフトウェアである、ControlSpace DesignerとModelerを組み合わせれば、どんな設計も可能です」とカッチャトーレ氏は語ります。「出力を少し落としたり、スピーカーの向きを微調整したりするだけで、壁面の展示品を遮ることなく理想のサウンドを実現できました。」

「Modelerを使えば、スピーカーを1台も設置することなく、その空間でどう聞こえるかをクライアントに見せることができます」とキャリガン氏は付け加えます。「まさにゲームチェンジャーですね。」

このプロジェクトの成功は、テクノロジーだけでなく、RSGグループ、マウンテンメディア、そしてBose Professionalという強固なパートナーシップの結果でもありました。「ゴールドジムのプロジェクトは、私たちの期待をはるかに超えるものでした」とキャリガン氏は語り、こう続けます。「今、私たちがここまでできているのは、Bose Professionalチームのおかげです。彼が情熱をもって支え続けていてくれるからなのです。」

カッチャトーレ氏は、Bose Professionalのオープンな協力姿勢が大きな成果につながったと強調します。 「長年Bose Professionalと仕事をしてきて、私たちは製品を想定以上の領域まで活用してきました」と彼は語ります。「ときには型破りな用途で使うこともありますが、そのたびにエンジニアリングチームは前向きに取り組んでくれます。お互いに革新的なアイデアを共有できたのも大きな財産です。いつでも技術者に直接連絡が取れて、物事がスムーズに進む。このサポートには本当に満足していますし、それが大きな力になっているんです。」

ゴールドジムは朝5時から深夜まで営業しているため、施工作業は営業時間外に行う必要があり、タイトな時間の中で正確な作業が求められました。 「旧システムはそのまま稼働させ、既存のスピーカーも取り付けたままで作業しなければなりませんでした」とカッチャトーレ氏は振り返ります。「そして新しいシステムが設置できたら、ほんの数時間で切り替えを行い、しかも即座に“前より良い音”を実現する必要があったんです。」

そして、それは見事に成功し「電源を入れた瞬間から、サウンドは完璧でした」とカッチャトーレ氏は語ります。

最新のBose Professionalシステムを中心に刷新されたゴールドジム・ベニスビーチは、今やそこに集うアスリートたちに負けないほど力強い音響体験を提供しています。ブリュー氏はその成果をこうまとめます。「Bose Professionalの製品で空間全体をリモデルした今、ここには最強のトレーニーだけでなく、最強のサウンドも揃いました。」

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