プロジェクトについて
ウィンターサーカスが開業したのは、1885年、フランドル地方の都市ゲントでした。およそ60年間にわたり、人気の屋内サーカスとして多くの観客を楽しませ、街の人々に親しまれてきました。しかし、第二次世界大戦の影響による破産で、1944年にその歴史はいったん幕を下ろします。それから戦後1970年代にはクラシックカーの駐車場として使われ、そして2005年、ゲント都市開発機関sogentによって新たな可能性を託されることとなったのです。
ウィンターサーカスの改修は、構造の強化や最新の技術設備の導入、パブリックスペースの再設計など、2つの段階に分けて進められました。開業から100年以上が経った今、建物は現代的なエンターテインメントとテクノロジーの拠点へと生まれ変わり、2022年にはヘント・モニュメント賞を受賞。歴史ある外観はそのままに、内部は一新され、コミュニティやアート、ビジネス、アイデアが交わる場所となりました。
Bose Professionalのソリューション
築150年近い建物を、現代の多様なマルチメディアのニーズに対応させる改修は、決して簡単な作業ではありませんでした。リニューアルされたウィンターサーカスは、大規模イベントの開催にも対応できる設計で、ビジネス、ダイニング、コミュニティといった複数のエリアを備えています。各エリアには、一貫性があり信頼できる高品質な音響ソリューションが求められ、既存のシステムを統合しつつ、クリアな音質を届けるとともに、歴史的な趣も損なわないことが課題でした。
「私たちが求めていたのは、単に日々のBGMをまかなうだけのものではありませんでした」とウィンターサーカスCEOのルイ・ヨンクヘーレ氏は語ります。「プロフェッショナルな会議にも対応できる。文化的な観点から没入型の体験を提供できる。そんなソリューションが必要だったのです。」
しかし、改修チームは最初からいくつもの課題に直面していました。なかでも最大の課題のひとつが、複数のビジネススペースやエンターテインメント空間をつなぐ最先端のAVシステムを、歴史的建築としての趣を損なわずにどう組み込むかという点でした。建物の美観を保つため、既存の配管や経路を活用し、歴史的要素を改変することなくスピーカーを設置することが必須条件だったのです。
本プロジェクトを担当したインテグレーターのSoviluxは、強力かつ精密でありながら、建物の建築遺産を尊重するシステムを設計・導入する必要性を理解していました。そこでBose Professionalと緊密に連携し、あらゆる要件に対応しつつ、相互運用性を重視したソリューションを構築。すべてのコンポーネントがシームレスに連携できるよう設計しました。さらに、映像システムやデジタルサイネージ、サードパーティ製コントロールシステム、ワイヤレスマイクシステムなど、さまざまな機器や技術とも統合できる包括的なAVソリューションを実現したのです。
「Bose Professionalが持つ多彩なスピーカーを組み合わせて導入できたことは、私たちにとって非常に興味深いプロジェクトでした」とヨンクヘーレ氏は語ります。「アトリウムにはステアラブルスピーカーを用いた、より技術的なソリューションを採用しました。サブウーファーによって非常に没入感のあるサウンドを実現し、どこにいても同じ音量に聞こえる空間を目指しました。」
現在のウィンターサーカスは、クラシックな趣と現代のテクノロジーが融合した、新しい姿を備えています。SoviluxとBose Professionalは、歴史と先進性を両立させるという難題を見事に実現。直感的な操作が可能なコントロールインターフェースにより、スタッフは複雑なAVシステムも容易に管理でき、最小限のトレーニングであらゆるイベントに対応できるようになっています。 完成したシステムは、ウィンターサーカスのスタッフやクルーの期待を大きく上回るものでした。
「最終的な結果は、私の想像をはるかに超えていました。特に展示室やグランドセントラル・アトリウムでの音響体験は、まさに没入感を超えるものです」と、プロジェクトマネージャーは語ります。
キーとなったシステムのひとつは、カスタムDSP設定やルーティング構成を組み込んだ集中型かつモバイル対応のコントロールシステムの採用でした。これにより、音響・映像・照明の管理が容易になり、スタッフの運用負担を大幅に軽減。さらに、Danteによるオーディオ・オーバーIPをはじめとした標準化されたAVプロトコルと接続オプションを活用し、システムの将来的な拡張性と柔軟性も確保しました。
Soviluxは、会場のさまざまな空間で均一かつ最適な音響を実現するため、19種類以上のスピーカーとサブウーファーを組み合わせました。メインアリーナでは、大規模イベントに対応できる高いSPL(音圧レベル)を確保。最終的なシステムには、50台以上のArenaMatchシリーズ、40台のDesignMaxシリーズ、さらに約50台のFreeSpaceシリーズのスピーカーが導入されました。ビジネススペースには20台以上のVB-SおよびVB1ビデオバーを設置し、広い部屋には十数台のMSA12Xスピーカーを配置して、指向性のあるクリアなサウンドを実現しています。さらに、会場全体を支えるのが15台のPowerShare PSXシリーズアンプ。これらすべてのシステムは、将来的な拡張やアップデートにも対応できる柔軟な設計となっています。
ウィンターサーカスは、歴史と革新を融合させ観客に新しい体験を提供しています。Bose ProfessionalとSoviluxの技術により、歴史的な建物に最新の技術が見事に取り入れられ、ゲントの過去を伝える歴史的な記念碑であると同時に、新たな音とともに未来の歴史を紡ぐ場所となったのです。
「ウィンターサーカスには『決して探求をやめない』というタグラインがあります。19~20世紀のサーカスは、人々にこれまで見たことや体験したことのないものを見せる場所でした。まさにその精神を今一度ウィンターサーカスで実現したいと思っています」とロンケーレ氏は語ります。「人々が見たことのないパフォーマンスや体験をここで届けるために、Bose Professionalの音響体験は非常に重要な役割を果たしています。」
パートナー:Sovilux
Soviluxはデインツに拠点を置く、トップクラスの映像音響統合会社。ゲントのウィンターサーカスにおけるBose Professionalソリューションの導入を担当。独自の会場に合わせた高品質なAVソリューションを提供する技術で知られており、スムーズで効果的な設置を実現しています。