プロジェクトについて
ヨーロッパ屈指の音響を誇るスタジアムで、卓越したサウンドを提供
ポーランドのワールドクラスのスタジアムで、ArenaMatchの導入、精度の高い設置施工、そしてチームを越えた密な連携により、音声明瞭度とファン体験の向上を実現。
Opole市は、Odra Opoleのために新しいスタジアムの建設を進めました。その構想は、単なる近代的なスポーツ施設にとどまらず、文化的ランドマークであり、地域コミュニティの集いの場となり、さらにコンサートや各種イベント、国際試合にも対応できる高性能な会場を目指すものでした。 その結果誕生したのが、イタカ・アリーナです。印象的な建築デザインと持続可能なインフラを備えた最先端の施設であり、ヨーロッパ各地で注目を集めているサウンドシステムを備えています。
2025年3月に完成したこの11,600席のスタジアムは、リーグ戦やコンサートをはじめ、フェスティバルやファミリー向けイベントなど、さまざまな用途に対応できるよう設計されています。 こうした多様な利用シーンに対応するためには、あらゆる状況においてパワー、明瞭性、そして高いコントロール性能を発揮できるサウンドシステムが求められました。そこで採用されたのが、Bose Professionalのソリューションです。
ポーランドのスタジアム設計における新たな基準
イタカ・アリーナは、1930年に建設された老朽化したオドラ・オポーレ・スタジアムに代わる施設として整備されました。同スタジアムは、複数回の改修が行われたもののそれも古くなり、実用性にも課題を抱えていました。新施設の建設は、2020年の設計入札を経て、2021年にMirbud S.A.へ契約が発注されたことを受けて開始されました。Mirbud S.A.は、ポーランド国内で複数の著名なスタジアムを手がけている企業です。
ワルシャワを拠点とする90 Architekciが設計を手がけた新スタジアムは、機能性と美しさを兼ね備えた構造となっています。半透明のテフロン加工ガラス繊維によるファサードがスチールフレームを包み込み、456基のRGBライトによって照らされます。これらの照明は、クラブのイベントや祝日、コンサートに合わせて色が変化します。 スタジアム内部には屋根付きスタンドや最新のフードキオスクが整備されており、障がいのある方にも配慮した高いアクセシビリティを確保しています。また、専用のファミリーセクションや暖房を備えたVIPエリア、自動運用に対応したプレスルームなど、充実した設備も備えています。
Bose Professionalのソリューション
しかし、特筆すべきは、イタカ・アリーナがゼロエネルギー施設として設計されている点です。出力280kWpの太陽光発電設備によって電力がまかなわれています。さらに、設計にはエコロジー型ヒートポンプやコージェネレーションユニットを採用しているほか、灌漑用の雨水回収システムも組み込まれています。
「私たちは、このスタジアムを真にエコロジカルで、現代的かつ運営コストを抑えられる施設とすると同時に、最高水準の品質と耐久性を備えたものにすることを目指してきました」と、Patryk Stasiak(オポーレ市営事業体マネジメントボード代表)は述べています。
音響の課題は、パワー・明瞭性・柔軟性
約12,000人を収容する観客席、複数ゾーンに分かれた構造、そしてサステナビリティと高いパフォーマンスの両立という要件を備えたイタカ・アリーナでは、単にピッチをカバーするだけの音響システムでは不十分でした。 ファンに没入感のあるオーディオ体験を提供するとともに、スピーチやアナウンスを明瞭に届け、さらにコンサートや式典では音楽としての迫力を発揮できることが求められていました。
その課題に応えるパートナーとして、Bose Professionalが選定されました。システムの中核を担うのは、大規模な屋外会場向けに設計された ArenaMatch AM40 モジュールです。 本スタジアムは、このシステムを導入した中欧初の施設となり、サンダーランド A.F.C.、PSV Eindhoven、ユヴェントス といった名門クラブと肩を並べる存在となりました。
本プロジェクトは、AV Projekt(システム設計)、Commercial Audio(コーディネーションおよびコミッショニング)、Ragtime(設置およびLEDスクリーン統合)が緊密に連携し、複数年にわたって導入が進められました。Commercial AudioのTomasz Nowickiがプロジェクトリーダーを務め、屋内音響システムの設計も担当しました。
「Bose Professionalでは、スピーカーの設計・製造に非常に長い時間をかけています。徹底したテストを行っているからです」と、Jarek Repećは述べています。 「-30度の低温や、+70度の高温環境を再現し、そうした条件下でも性能を発揮できることを確認しています。また、当社の基準では、さまざまな環境条件において500時間の連続再生を行っても、性能パラメータに一切の変化がないことを求めています。」
精密な設置と厳格な調整
スタジアム全体で、合計24台の ArenaMatch AM40 モジュールがクラスター構成で設置。長辺側にそれぞれ5クラスター、短辺側にそれぞれ3クラスター、さらに各コーナーに1クラスターずつ配置されています。 予算上の制約で、当初の設計より少ないクラスターで構築しなくてはならず、各クラスターには極めて高い精度の設置が求められました。スピーカーは、水平方向で0.5メートル以内、角度については0.5度以内という精度で設置されています。
「客席に音を届けるスピーカーそのものの設置も、大きな課題でした」と、Tomasz Nowickiは述べています。「当初の設計では、もっと多くのアレイとスピーカーを想定していましたが、予算内に収めるために台数を減らさなくてはならなかったんです。その結果、すべてのクラスターを“外科手術のような”精度で配置しなければなりませんでした。」
スピーカーは、12台の PowerShareX PSX4804D アンプによるバイアンプ構成で駆動。アンプはスタジアム四隅に設けられた4カ所のラックに分散配置されています。 各ラックにはネットワーク対応のCisco CBSスイッチが組み込まれており、純粋なポイント・ツー・ポイント構成のDante光ファイバーリングで接続されています。このネットワークは、メインコンソール、プレスルーム、VIPエリア、OBバン、そして中央オーディオプロセッサーも相互に接続しています。
システムは、2台の ControlSpace EX-1280 processors によって管理されており、冗長構成で万が一1台に障害が発生しても、もう1台がシームレスに引き継ぐことができます。これにより、試合当日のパフォーマンスはもちろん、緊急放送の対応も、途切れることのない音響カバレッジと最大限の稼働率が確保されています。
コントロールシステムの中核は、アナウンサーブースに設置されたYamaha TF-1コンソールです。さらに、Yamaha TF-3コンソールと、Yamaha Tio 1608-D2Danteステージボックスが追加されており、モバイル用途やプレス対応においても高い柔軟性を確保しています。
あらゆるイベントに適応する音響システム
調整作業は、Bose Professional PolskaのDawid Roszczykと、Bose Professional Italyのスタジアム音響のベテランであるMoreno Zampieriが主導。彼らの目標は、スタジアムのすべての座席にクリアで均一な音を届けることでした。特定の“スイートスポット”だけを狙うのではなく、スタジアム全体をスイートスポットとして捉えることを目指しました。
「最大の課題は、システムをひとつの“スイートスポット”に合わせてチューニングできなかったことです」と、Dawid Roszczykは述べています。「最前列から最後列まで、すべての人に同じ体験を提供し、同じ音質を楽しんでもらいたいと考えていました。」
複数のマイクと120を超える測定ポイントを用い、各ゾーンを最大限の明瞭性が得られるよう調整しました。その結果、会場全体でスピーチ伝達指数(SPI)は0.58〜0.65を達成。これは、屋外環境としては非常に優れた数値です。
フィールドモニタリングおよびイベント時のパフォーマンス用途として、8台の ArenaMatch AM40 loudspeakers がピッチに向けて設置。両サイドにそれぞれ4台ずつ配置されており、選手やパフォーマー、式典参加者がリアルタイムで音を確認できるようになっています。
「ピッチ用のモニターシステムを構築したことで、大規模なインイヤーシステムやフロアモニターがいらなくなりました」と、Tomasz Nowickiは述べています。「これにより、制作もシンプルになるし、重要なアナウンスを全員が確実に聞き取れるようになります。」
あらゆるゾーンをカバーするコミュニケーション
屋内には、DesignMax DM3P pendant スピーカーを採用。VIPルームやプレス施設で、統一された音質特性と高いデザイン性を実現しています。
プレスルームでは、3本のグースネックマイクを使用。EX-1280プロセッサーに内蔵されたオートミキサーによって制御されています。音量は壁面パネルまたはモバイルアプリから操作でき、専任のAV技術者がいなくても運用が可能です。
スタジアム全体のコミュニケーションには、Clear-Com Arcadiaインカムシステムを採用。FreeSpeak IIのベルトパックとアンテナで、ロッカールームから中継車まで安定した通信環境を確保。また、Sonifexのコメンタリーデスクもシステムとシームレスに統合されており、解説者が制作クルーと明瞭にコミュニケーションを取ることが可能です。
スペクタクルにふさわしいサウンドシステム
2025年3月に開催されたオープニングセレモニーは、新しい音響システムにとって華々しいデビューの場となりました。当初、外部のコンサート用アレイを持ち込む予定でいたアーティスト側クルーから反対意見もありましたが、最終的には、今回のシステムが経験豊富なエンジニアたちをも唸らせる結果となりました。
「各アーティストのサウンドエンジニア達は、スタジアムの常設システムでコンサートを行うのが本当に良い選択なのかと疑問を抱いていました」と、Tomasz Nowickiは語っています。 「しかし、リハーサルで最初の音が出た瞬間、彼らの顔には大きな笑みが広がりました。そして、自分たちが間違っていたことを満場一致で認めたのです。」
通常の試合日には、クリアなアナウンスの音声と臨場感あふれる音響体験を提供。そして、コンサートやフェスティバルでは、空席からの反射音を防ぐため、特定のゾーンを無効化することも可能です。そして、緊急時にはボイスアラームシステムが自動的に優先され、安全に関するアナウンスを確実に届けます。
スタジアム以上の存在:未来のモデルケースとして
イタカ・アリーナは、オポーレ市の誇りであると同時に、ポーランド全土のスタジアム設計のモデルケースとなりました。統合されたインテリジェントな音響システムにより、重要な試合から祝典やコンサートまで、あらゆるイベントの一瞬一瞬が力強く、正確に、そしてクリアに届けます。
「このスタジアムは、Odra Opoleの選手たちの施設というだけでなく、市全体や地域にとって、すべてを変える重要な存在です」と、Patryk Stasiakは述べています。「旧スタジアムとは比較にならない、素晴らしい施設です。」
そして、Bose Professionalチームとその地域パートナーのおかげで、同スタジアムの成功事例を参考にしたいと他の施設からの問い合わせが次々と寄せられています。
システムのハイライト:
- (24) ArenaMatch AM40スピーカー(バイアンプ構成)
- (12) PowerShareX PSX4804Dアンプ
- (2)冗長性を備えたControlSpace EX-1280プロセッサ
- (8) ArenaMatch AM40スピーカー(ピッチモニタリング用)
- Dante対応のCisco CBSネットワーク、光ファイバーリング
- ヤマハTF-1およびTF-3コンソール
- Yamaha Tio 1608-D2 Danteステージボックス
- プレスエリアおよびVIPエリア用DesignMax DM3Pペンダントスピーカー
- Clear-Com ArcadiaとFreeSpeak IIインターコムシステム
- ワイヤレスとIEM統合機能を備えたSonifexコメンテーターデスク
インテグレーター
Ragtime
オポーレを拠点とし、システムの設置およびLED統合を担当。
システムコーディネーション
& 屋内デザイン
Commercial Audio
Tomasz Nowicki がプロジェクトの監督と室内音響システムの設計を指揮。
オリジナルシステム設計
(スタジアムクラウン)
AV Projekt
ArenaMatchを基にした設計の開発・調整
注目のコンポーネント
FreeSpace 3シリーズIIモジュール
フラッシュマウント式で、聞き取れるほどの歪みなく 40 Hz までの低音増強を実現。バックグラウンド ミュージック システムを活気づけるのに最適です。
Modeler Sound System Software
スピーカーの配置と音響性能を最適化するための予測モデリングを提供します。
ControlSpace Designer&リモートビルダー
カスタマイズされたシステム制御が可能になり、スタッフにとって複雑なマルチゾーン管理がシンプルかつ直感的になります。